髑髏城の七人――アオドクロ 2004年公演版

織田信長が死んだ直後の関東を舞台にしたファンタジー時代劇らしい、くらいしか認識しないで観始めると、いきなり西洋のスーツメイルに身を包んだ第六天魔王が現れたので驚愕。
そう、あの、『アテルイ』の劇団☆新感線だったのです*1
脚本も『アテルイ』と同じ中島かずき
弥が上にも期待が高まります。


粗筋紹介は後輩の物を抜粋。
 本能寺の変から8年。秀吉の征伐を目前にした関東は、仮面の魔人・天魔王が率いる関東髑髏党なる勢力に支配されていた。
 髑髏党に追われる少女・沙霧は謎の男・捨ノ介に助けられるが、捨ノ介と天魔王の間には浅からぬ因縁があった……。

話の筋について

実は観終わった後、大きな疑問が拭えませんでした。
「何故七人だったのだろう?」
七人でなく、三、四人で充分話になるのです。
もっとも、この辺は、RPGをやっているが故なのかもしれません。
物語が転がるのに必要な分だけで、同上人物は充分という。


只、一旦「七人をメインに据える」という前提を踏まえてしまえば、これは凄い話です。
RPGでPCに予め見せ場を作る際には、普段、三人くらいしか出来ないと思います。調子がよくて四人でしょうか。
でも、この『髑髏城の七人』では七人全員に、きちんと、見せ場があると言うか、描くべき物があって、無理無く全員分、描いているのです。
天才かと思いました。


そもそも物語を、人物を描いて人間の性質を浮き彫りにする物とすれば、話の展開なんて観ている人の興味を引く為にあればいい物で、物語の「為」に登場人物がいるのではない、とも考えられます。

俳優について

アテルイ』ではヒロイン役があまりに大根で、最初はいらついたものの、途中からは寧ろ爽やかな笑いの提供者として心待ちにするほどでしたが、今回は、そういった人は誰もいませんでした。
ヒロイン、沙霧役の鈴木杏は上手でした。まるで、アニメーションや洋画で男の子を演じるような声の持ち主で、そのために女おんなしたヒロインでなく、成長の可能性を秘めた、強き者に憧れる雰囲気が出ていました。
セリフを見ると、多分、いわゆる女としてのヒロインなんでしょうが、僕の目には「少年の成長物語」のようにも見えてしまって、ちょっと失礼かなと思いつつも、そっちの方が楽しめたのです。


しかし注目は、やっぱり主演の市川染五郎でしょう。
他の役者さんもかなり上手なのですが、しかし市川演じる玉ころがしの捨之介が出る場面は、空気が違う。
演劇を観る機会が少なくて言葉を持たないのがもどかしいのですが、多分、技術以上の物が、あるのかもしれませんね。
ああ、本物なんだなあ、と、そういう感想を抱かせる役者さんでした。


一度新感線の演劇を、生で観てみたいなあ。
札幌にもたまに来ているみたいですし。

*1:市川染五郎などゲストも多いんですが。