復讐の形

二宮ひかるは特に短編が好きで、大体買ってあるし何度も読むのですが、楽しみの半分はそれぞれについての著者による雑談です。物語に関係あることもあればないこともあり、物の感じ方が簡潔に表現されていてしかも、僕と大きく違うのでとても楽しい。
その中の一編、「復讐のように」。これのコメントは恐ろしい。短編集の表題作です。

復讐のように (ジェッツコミックス)

復讐のように (ジェッツコミックス)

話は、ふいといなくなってしまっていたガールフレンドが、ある日部屋に帰ってみるといる、そして「復讐だ」と言っては、居付いて布団を奪ったり料理をしたり、何がしたいのか分からない。しかし、やがてそれが復讐だということの「意味」を悟った主人公は……という物。


「新聞を先に読む」「靴を勝手に履いて履き潰す」という、極めて非効率的な「復讐」をする彼女によって毎日がうるさく――賑やかに――なって、それが(再び、別れる前のように)当たり前に戻ること。
これが彼女の復讐。
主人公はそう考えます。
物語は主人公の視点で描かれて、彼女の方がどう思っているのか、セリフと態度から窺えることはあっても本当のところは読者にも分からないのですけど。
まあなんか可愛い復讐で、読んだあと一瞬ほのぼのします。


この作品にまつわる一言コメントには、二宮ひかるの考える復讐は上とは全然違う、と書かれていました。
では彼女は、どういうのを復讐と思うのか、それは相手が自分にうんざりするほど一緒にいてやって、本当にいらないと思われた時に姿を消すことだそうです。
当然、相手は寂しくも思わないし「あーせいせいした」と思う。
それを見て「ほらね、やっぱり」と、言うのが、彼女の復讐だそうです。
漫画の「くすり」と微笑ましい読後感のあとにこれを読んでぞっとしました。恐ろしいと思いました。こういう復讐は勘弁願いたい。そして自分からはやりたい。
簡単に「それを見て」と書きましたが実際に「見る」ことはできない、というのもまた……。


この復讐観は、実は『ハネムーンサラダ』で使われていましたね。