ボトルネック

以前読んだ『氷菓』では「ライトノベルで、こんな暗い結末で賞を取れるのかあ」と驚いたものですが、デビュー後なら、安心して読めます(笑)。
米澤穂信の『ボトルネック』です。

ボトルネック

ボトルネック


ネタバレあり。


物語は高校生の嵯峨野リョウが、気絶して気が付いたらパラレルワールドに来ていたところから始まります。
勿論最初はパラレルワールドだと気付かず、取り合えず家に帰るのですが、そこに見知らぬ女が。
話を聞くとどうやら彼女は、リョウの世界では流産された彼の姉サキだそうです。
この世界では、姉は流産されずちゃんと生まれ、代わりにリョウが生まれていないのです。


このアクティブでポジティブな姉(?)と一緒に、辛うじてだけど心当たりと呼べる所を巡るうち、サキが自分と違って、何と周りをいい方向へ向かわせているか、それを痛感します。(元いた世界での)恋人の命を救っていたり何なりです。
それを実感したリョウは「もう生きたくない」と呟き、その瞬間、元の世界へと引き戻されます。
そして、自殺の為、崖へと、向かうのです。


元の世界とパラレルワールドとで、何を原因としてどのように世界が変わっているのか、それを簡単な論理の積み重ねで謎解きしていくという、米澤穂信らしい作品*1


「こうして自分よりもずっとうまくやっていっている姉を見て、最後に、自分の世界で、今度はリョウがうまくやる道を歩み始めるのがセオリーだよな。でも、今までの展開だとその流れになりそうにないし……どうするんだろう?」
と思っていたら、全然そんなことなく、普通に自己否定して終わるのに、大いに驚きました。
技術的には勿論、リョウが前向きになる、という展開の方が難しい筈ですが、あんまり関係なくこれでも楽しんでしまえるんだなあという、実証が得られたのが一番の収穫かなあ。


全編根暗なトーンで、そこは大してアップダウンがないのに読ませてしまうのは結構凄いかも。


何だか煮え切らない感想ですが、楽しみました。
つまり感想を言い難い作品なわけですね。

*1:と言っても、他に『氷菓』しか知りませんが。