シスター・ブラックシープ III 薔薇と聖歌

帰りの電車の中で読んでいて、止まらなかったのでファミレスに寄って読み終えた喜多みどりの「シスター・ブラックシープ」第三巻『薔薇と聖歌』。いやーラノベで助かりました、京極夏彦みたいな分量だったら徹夜でしたわ。

シスター・ブラックシープIII  薔薇と聖歌 (角川ビーンズ文庫)

シスター・ブラックシープIII 薔薇と聖歌 (角川ビーンズ文庫)

「シスター・ブラックシープ」はヒーローものです。


中世くらいのヨーロッパにある【悪徳の都】サクスを舞台に、夜な夜な変装して日中の鬱憤を晴らすかのように……っていうのは半分は言い過ぎですが、まあ、悪魔から授かった(?)怪力やら俊敏さやらを活かして暴れるコンスタンティンの話なのです。おっと、暴れて悪を懲らしめるコンスタンティンの話です。コンスタンティンというのは、サクスの教会の助祭で、本当は女なんだけど然る事情から男として生活している可哀想な女の子、そりゃ鬱憤も溜まる……しつこいですね、ごめんなさい。
でも実際、悪を懲らしめる動機の半分くらいは「暴れて気持ちがいい」だったのです、この巻の終わるまでは。もう半分は「そうしないと悪魔に地獄に連れて行かれてしまうから」。善行を積まなくてはならないのです。


ところがこの巻で。
【悪徳の都】と呼ばれるこの街で。
伝説のヒーロー【黒き羊/シスター・ブラックシープ】として悪事を懲らしめていた自分が、その風評が街の中にある程度の存在感と影響力を持ち始めたと知って。
それで、ようやく、自分の責任と影響力と避けては通れない物と避けたくない物とやりたいこととそれをすることによって立たされる孤独がはっきりしたコンスタンティン


三巻目を数えて、笑わせにくるリズムを掴んだ感のある喜多みどり、元々上手だった「リアリスティックな政治的立場に則った動きと、その上でもやっぱりロマンチックな立ち回りをする脇役たち」*1というのとがもの凄くバランスよく配置されています。
その上で、ヒーローものというコンセプトの単純さが話の幅を広げて、というのはつまり街の色んな層に色んな影響を及ぼす様子を丁寧に描くことが自然にできて、完成度の高い一冊になっていると思います。
今までの巻と一線を画している気がする。


突然ですが終わります。
ごめんなさい全然日本語が書けなくて(笑)。

*1:『龍の玉座』、すごくいいですよね。