ベンゴ

トニー・ガトリフ監督『ベンゴ』観ました。


ガッジョ・ディーロ』が無かったのでこれを借りて来ました。
前回は確か、眠たい時に観たので、フラメンコの迫力しか印象に残っていなかったり。
そんなわけで観直したのですが、こんなに面白かったとは。前回の僕を殴り飛ばしてやりたいです。
あれから視点が変わったというのも、あるんですけどね。

舞台はスペインのアンダルシア地方……なんてことは、観ていただけでは分からず、レビューページで知ったんですけどね。僕にヨーロッパの風景は判別できません。


前半、ヒターノ(一応、ロマ民族のサブグループ、かな)のカコが同じくヒターノの歌手を呼んで、踊り子を呼んで、パーティーを開く、それを何度か繰り返します。
それは一人娘を失った辛さを紛らわす為であり、唯一残った肉親である甥のディエゴを喜ばせる為でもあります。
パーティーに限らずカコは、ディエゴの為なら何でもします。女をあてがったり、失踪中の兄(ディエゴの父)に携帯電話を届けさせて、ディエゴと話させたり。
カコがディエゴに向かって言った言葉に「(ディエゴは)お城より大事さ」というのがあるのですが、まさにその言葉の通り、彼の為なら何でもしています。
この当たりを、フランスっぽい、アメリカ映画のようなねばっとした描き方でなく映すので、こちらから積極的に共感してしまいます。


物語も半分を過ぎると、しかし、段々と陰鬱な雰囲気が画面に流れてきます。
それまでも壁に復讐の予告が書かれていて、気配はあったのですが、他の楽しい、または切ない場面の中に紛れてあまり意識されませんでした。
所がこの辺りで、その復讐を企てる本人達も顔を出し、もっと露骨に、脅迫してきます。
「弟を殺した者(ディエゴの父)を差し出せ。そうでなければその息子を」と。
再三に渡って交渉するカコ達ですが、相手は一向に聞き入れる気配がありません。「誰かに弟の死を償ってもらわねばならん」と言うのです。
やがてカコは辛さのあまり更にパーティーを開き、更に酒に溺れ、そして、物語は終焉へと。あとはネタバレなので書きません。


話はとても単純です。でも、愛情の色々の描き方や、セリフを使わない心情の描写など、分かり易くもうんざり感無く、観ていて心地よい映画です。
何か音楽が聞きたくなりますね。


でも一つ疑問が。
何がきっかけでカコは、この物語を終わらせてしまったのでしょうか。見逃してしまったかな?
もう一回観ようっと。