ファンドリア


ファンドリアには「正義」が存在しないと書きましたが、間違いなく「悪」であるものは存在します。それは「無能」です。
格好いい!


前々から気になりつつも手を出していなかった「ソードワールドRPGツアー」ですが、噂に後押しされて第三弾の『ファンドリア』を買ってしまいました。
『完全版』を買った辺りで僕のソードワールドはストップしていたのですが、久しぶりにアレクラスト*1の“現在”に触れて、色々と驚きます。


まず読んだのは裏表紙に書かれた“闇の大司祭”クロークの物語。


かつてファン王国の栄えた時、一人の男があり、この国を暗黒神の教義で支配しようと企てた。
名をクロークと言ったが、民衆には“闇の大司祭”と呼ばれ、その行いを恐れられた。
彼は類稀なる美貌と洗練された言葉によって王妃の寵愛を勝ち得、ひいてはあまたの手段で政敵を消して宰相に昇り詰めた。
国王を暗殺し、召喚した魔神を王位に就かせた。


クロークは重税、重労働、殺戮と言ったあらゆる暴虐を働いた。暗黒騎士団を組織して隣国のラムリアース王国に侵略した。だが、結局はそのせいで窮地に追い込まれた。
反対に敗れ、ラムリアースの軍に包囲されると、彼は魔神に安全な場所へ連れて行くよう懇願した。
魔神は召喚者の要求を喜んで受け入れ、最も安全な場所――自らの故郷たる異界に引きずり込んだ。

(訳は s2。参考:『ソードワールドRPGワールドガイド』)
本書中、裏表紙にのみ登場するクローク司祭。「歴史」の項にすら出てこないのにこんな所に、しかも英語で書かれてしまって、著者はどういう意図だったんでしょうか(笑)。


ファンドリアという国は暗黒神の筆頭であるファラリスの信仰が公的に認められており、ダークエルフやダークプリーストが街中を平気な顔で歩いています。
更に盗賊ギルドや貴族連中は勿論、光の神々の各神殿すら権力争いに明け暮れるという腐敗した情勢の中、なんと、この本では、裁判が大きく取り上げられているのです。
賄賂強請が当たり前のこの国で行われる裁判とは、即ち「権力のぶつかり合い」「賄賂を得る場」「弁護士のディベート・ゲーム」です。
このやたらと詳しい裁判の仕組みの解説、続く各勢力の説明を読むと、裁判に有利な情報を集めるシナリオなどをプレイしろということなんだろうか? と思われてきます。


更に、第一章「ワールドガイド」の最後にはプレイヤー、GMが従うべき“プレイの仕方”まで載っています。「依頼人冒険者を裏切るシナリオは作るな」などです。
こんな物が載るだなんて、とっても意外。


本書にはファンドリアを舞台にしたシナリオが三本載っているのですが、そこにちょこんと、サンプルキャラクターが紹介されています。これも、とっても意外。
しかも、名前、性別、プロフィールまで決まったサンプルキャラクターです。まさかなあ、こんなサポートがされるだなんて、昔は全く想像しませんでした。これは楽です。
(そういえば「RPGドラゴン」誌のケイオスランドを舞台にしたシナリオでは、サンプルキャラクターが付いていましたっけね)


そして噂に名高いシナリオ三本目に出てくる、新たなる邪神「リアセフォー*2」。
“運命を定める”神で、信者は「リアセフォーの定める運命に従うことで皆が幸せになれる。抗うものは邪悪」との教義に従っています。
とうとう、この世界にも運命論者が!
しかもです。考えてみてください。神が(魂だけとはいえ)実在しているフォーセリアで、運命を定める神の能力自体は、疑い得ない物でしょう*3
そう思ってまたリアセフォーの記述を読む。
すると、この神が何だか邪神とは言えない気がしてきます。
ファラリスの信仰も許しているこのファンドリアですら、邪神扱いの、この神がです。
いやほんと、『ファンドリア』には驚かされっぱなしです。


追加ルールとしてファンドリア内での冒険者の持つ“権力”を数値化して、その変動を扱うルール、ダークエルフとダークプリーストをPCとするルールも載っています。
興味がある方はどうぞ。


興味ある人もいないでしょうが、以下、裏表紙のクローク司祭の物語です。凝ったフォントが使われていて読み取り難いと思われますから載せてみました。



There was once a man, when the Phun kingdom throue, who schemed to rule this kingdom following the doctrine of the God of darkness.
His name was Cloak, but people called him "Dark High Priest" and feared his conduct.
Armed with his rare beauty and smooth tongue, he won queen's favor, then liquidated political rivals by various means and rose to the rank of prime minister.
He assassinated the king and put a demon he had summoned in the throne.


He committed all kinds of atrocities such as heavy taxation, heavy labor and massacre. Cloak organized the Order of Dark Knights and invaded the neighboring kingdom, Ramliearth. But it drove him into a corner after all.
Being defeated and, on the contrary, besieged by the army of Ramliearth, Cloak begged the demon to take him for safety.
The Demon willingly accepted its summoner's request and dragged him into the most secure place - its home plane.


ソードワールドRPGワールドガイド』の p.62 の内容を縮めた物になっています。

*1:ソードワールドRPG』の主な舞台となる大陸の名。

*2:フォーセリアアナグラム

*3:本当は信者に歪んで伝わっている、ということもあるんでしょうが。