覚めない夢
『Time of Judgment』*1を読んでいます。
収められた『チェンジリング：ザ・ドリーミング*2』のシナリオ「Endless Winter（終わりの無い冬）」を読んでいます。
人から、ストーリーテラーをしたいので『Time of Judgment』を読んで内容を教えるように、と頼まれたのです。
正確に言うと、返してもらった後で「ストーリーテラーをするから内容を教えろ」と言われたのですが。
いずれにせよ酷い話です。
それじゃあ、僕は、プレイヤーもストーリーテラーもできません。
僕の『チェンジリング』の経験は短く、三年ほどです。
三年前にルールブックを買い、ぱらりとめくると全ページフルカラーで大喜びしました。
更に、オープニングストーリーからはよく雰囲気が伝わり、読むととてもやる気が出たものです。
最初は漫然と興味のある所を、ちょぼちょぼと少しずつ読んでいたのですが、ある時「コンベンションでストーリーテラーをしよう」と思い立ち、家にいる時間は殆ど翻訳に充てるようになりました。
（その際には、日本語で読める各サイトに、知識面では特に「BIFROST」に大変お世話になりました）
翻訳している間は楽しかった。
キス*3を一つずつ訳しながら、その楽しそうに駆け回る様、悲しげに現代を見詰める様に思いを巡らせてわくわくして、『チェンジリング』の、夢と「暗黒の世界」の融和を表すうまいルール群に溜息を漏らして、正に夢の中にいるように、楽しかった。
翻訳が遅々として進まないのには焦りを覚えましたが、それと同時に翻訳中は楽しく、少しだけ、このままずっと翻訳が終わらなければ、という気持ちもありました。
セッションもせず、ルールブックの一語一語から暗黒の世界のファンタジーを感じ取れる時間は、とても素敵な時間でした。
「『チェンジリング』の翻訳が終わったら、お酒を開けてお祝いしよう」
と言って、楽しみにしてくれた人がいるほど、傍からも熱心に見えたみたいです。
（その人は、日本人らしく平板に「ちぇんじりんぐ」と発音する人でした。僕は「り」に第一アクセントを、「ちぇ」に第二アクセントを置いてしまいます）
数ヶ月してコンベンションが目前に迫り、焦って翻訳し、やがてプレイできるようになると、システムに慣れる為に一度セッションをしました。
蛹*4状態の子供と、暴れ回る彼のキメラ*5に対処する、というシナリオでした。
いいシナリオではありませんでしたし、ルールワークの不備も目立ちました。
今度は、コンベンションのテストプレイとして別のシナリオを作りました。
読んだばかりの『ゲド戦記１ 影との戦い』に触発されたのが丸分かりのシナリオで、夢界*6から自由領*7を通って現れた騎士が、自分の影をこちらに逃がしてしまったと言うので、それを探すという物でした。
シナリオ構造に問題があって、それからシステム説明とシナリオ内容にギャップがあって、プレイヤーの一人は呆れながら怒り出してしまいました。
「何でこれ『ワールド・オブ・ダークネス』なんだろうね」なんて感想も貰ってしまいました。
それは相当に酷い物だったので、直すのは諦めて『ヴァンパイア：ザ・マスカレード』のシナリオを換骨奪胎して、当日は使いました。
一応うまくいきました。
苦しいながらも翻訳、セッション共にやれたのは、一つの、インターネット上の日記のお陰でした。
日記には、管理人の方が『チェンジリング』をプレイする様が、本当に楽しそうにプレイしている様がありありと窺えました。
その方はこのゲームに関してはとても純粋なゲーム観を持っていて、僕もそれを灯台に見立ててシーンを組み立てていったほど、影響を受けました。
（先の失敗はそれとは関係無い、僕だけの責任です）
その人に夢を見せてもらって、『チェンジリング』に手を出し、ようやく成功にまで漕ぎ着けたと言っても、全然過言になりません。
余談ですが、その方のサイトに載っていた『ヴァンパイア：ザ・マスカレード』のシナリオもプレイして、それもやはり成功して、これは僕には珍しいことなので嬉しかった記憶があります。
「言っていることは正しいけれども腹が立つ」というキャラクターがいて、そのキャラクターをシナリオ通り演じた時に「こいつむかつくなあ」とプレイヤーに言ってもらえたことを、今でもはっきり憶えています。
残念ながらそのシナリオは今は撤去され、保存していた物もデータが無くなって、今では記憶の中にしかありません。
日記の方も何度か改装されて、その折に過去ログは無くなってしまったので今は読めません。
でも、思い出くらいが、丁度いいのかもしれません。
いつまでも続く夢として。
追記。
後日続きを書こうと思っていましたが止めました。
