闇へ降りゆく

今日は『ワールド・オブ・ダークネス』のオンラインセッション「Weeping Alice(日本版)」後編。
とてもいいシナリオでした。
いいシナリオというのは詰まり、『WoD』のコンセプトをうまく表しているということ。
クトゥルフ神話物のRPG*1みたいに怪物や超常現象との遭遇を主眼に置いたシステムと違い、このゲームの主役はあくまで人間が「元から持っている内面」です。
タクシーの相乗りやら商売やらネトゲやら殺人やら超常現象やら、を通じて、これが歪む。『ゴーストハンターRPG』がもしかしたら近いのかもしれませんね。
これはRPGで表現しようと思うとかなり難しいのですが、「Weeping Alice」とストーリーテラーは巧くやってくれました。


WoD』発売直後に紹介されて読んだディーン・R・クーンツの短編「闇へ降りゆく」*2は、このシステムのコンセプトを見事に体現していて*3感銘を受けた憶えがあります。
長くなりますが骨だけ紹介してみましょう。
短くする為に敢えて出来事の順番を変えたり内容を変えています。
ネタバレします。

闇へ降りゆく―ストレンジ・ハイウェイズ〈2〉 (扶桑社ミステリー)

闇へ降りゆく―ストレンジ・ハイウェイズ〈2〉 (扶桑社ミステリー)


主人公は長年レストランの店主を勤めてお金も溜り、ようやく自分の家を買えるようになりました。
しかし新居候補には奇妙なドアがありました。自分一人の時にはあるのに妻と一緒だと現れないドアです。
気になって調べると、中にはどうやら化け物が棲んでいるらしいことが分かります。
後日、家の引き継ぎの為に元の持ち主と会うと、主人公はその人物に憶えがありました。兵役に就いていた頃、捕虜となった自分達を、散々虐待してくれた奴です。
向こうはこちらのことは憶えていない様子。きっと何百人もに非道な行いをしてきたからでしょう。
そこでふと思い付き、そいつを例のドアの向こうに閉じ込めてしまいます。自分個人の恨みではない、誰に聞いてもあいつは裁きを受けるべきと言うだろうから。
次に主人公は、レストランのオーナーを連れて来ることを考えます。汗みず垂らして働く自分達から、法外な金を取るから。
勿論主人公だって悪人ではありませんから、ちょっと腹を立てたからと言ってすぐにドアを使おうとは思いません。そんなことをしていれば良心の呵責が無くなり、ヤツラの仲間入りをしてしまうとちゃんと知っているのです。
だから相手は慎重に選んで、それ以外にの人には決して使ってはいけません。
と、リストを作り始めると、当初の予定より、随分と長くなってきています……。


蛇足ですが、この作品の本質は超常現象(ドアと怪物)ではなく、主人公の心です。
いつ堕落判定が入ってたのか、考えたみると視野が広がると思います。


これを『WoD』でどうやろうかと思っていたところでの「Weeping Alice」で、とても参考になりました。
こんないい作品を読んでいたのに、なあ。セッションではクトゥルフ的に動き方をしてしまったのが残念。
あとはストーリーテラー時に、PCを主人公のように動くよう、誘導する術を考えよう。

*1:コール・オブ・クトゥルフd20、クトゥルフ神話TRPGなど。

*2:短編集『闇へ降りゆく』所収。

*3:特に〈道徳〉と堕落判定。