くらくらする

二宮ひかるはずっと白泉社で描いていました。
今よくコンビニに置かれる本も白泉社です。
「読むと、したくなる。」なんてコピーと共に売られています。
(そうなのかなぁ……?)
だから、本屋に行った時もよく、新刊無いかな、と白泉社の棚を見ていました。
ある時、全然関係無く、少年画報社の棚を見ている時にこの人の名前を見た時には、だから、大きく驚きました。
中身を下調べすることも無く、その場ですぐに買いました。
ベイビーリーフ』です。

ベイビーリーフ (ヤングキングコミックス)

ベイビーリーフ (ヤングキングコミックス)

買ってすぐにバスの中で封を開いて、停留所を乗り過ごす勢いで夢中になって読みました。


読んでいる途中で、物凄く奇妙な感覚に囚われました。
どっかで見たような……デジャヴ?
本当にどこで見たんだったか、あるいは似たような光景を見たことがあるだけなのか、それとも本当のデジャヴなのか、思い出そうとして、でも話にも集中しなくちゃいけなくて、目の前をコマは通り過ぎるんだけど、頭の中で巧く処理できなくて、何度か同じところを読む。
くらくら、眩暈のような感覚がして、何だかよく分からなくなってしまいました。
仕方無いので、一度ゆっくり休んで、それがデジャヴなのかどうか思い出してみると、どうやら、同じ作者の『ハネムーンサラダ』で、全く同じページがあったのではないかと思い至りました。
そうすると、『ベイビーリーフ』では主人公達に一切固有名詞が無く、皆が「彼」「彼女」と他称で呼ばれていることにも気付きます。
ハネムーンサラダ』での主人公とその元彼女が、『ベイビーリーフ』の主人公のようです(名前は出ていませんが)。


これは高校生中学生で初めて性体験を持つ二人の物語です(どちらの視点でも語られます)。
とって付けたような物ではなく、物語の中心的出来事として、セックスが扱われている*1
付き合い始めも、付き合ってからも、そして別れにさえ、セックスが見え隠れする。
私見ですが)この頃から二宮ひかるは表情を大げさに描くようにし、それ故に微妙な感情を表現できるようになってきたと思います。


どんな人にお勧めかというと勿論『ハネムーンサラダ』の読者ですが、別れた人のことが暫く忘れられなかった経験のある人も、楽しく、と言うか、感情移入して、読めると思います。
あとは……
僕は普通に感情表現を楽しんで、是非ともそれを共有したいと思って読ませて、「どうだった」と尋ねると、一言目に「しよう」と、答えられたことがあります。
(認識のギャップにくらくらした、なんて言うと、ちょっと、陳腐でしょうか。でも一瞬思考が止まったのは事実です)
きっと、漫画としてではなく、ある種の疑似体験として読んだのではないかと、今は考えています。
その後どうしたのだったかはちょっと憶えていないのですが、「読むと、したくなる。」というコピーは、あまり気を払っていませんでしたが、実は中々核心を突いた表現なのだと実感する一瞬でした。
「読むと、したくなる。」を味わって見たい人にもお勧め。

*1:勿論、商業的な理由でも描かれていると思います。でも18歳未満でも買える。