ワールド・オブ・ダークネス「歌姫 ――UTA-HIME――」

先輩が冬休みを利用して遊びに来てくれたので、歓迎にと、希望のあった『ワールド・オブ・ダークネス』のストーリーテラーをしました。
シナリオは「ロール&ロール」Vol.15掲載の「歌姫」です。
http://www.arclight.co.jp/r_r/intro/intro15.html
読んだ時の印象以上に面白い、また、いいシナリオでした。
やはり読むのと実際プレイするのとは大きく違いますね。


以下ネタバレしながら感想を。
セッション後に読んでくださいまし。


追記。
プレイする時は、ストーリーテラーからシーンを割り当てていくのでなく、「さて、どう調査する?」と、プレイヤーの宣言に合わせてシーンを作っていくと、うまくいくと思います。

セッション前

終電を逃したせいでシナリオすらまともに確認できず、ルールブックを読んでいる暇は全くありませんでした。
ウェブ上のプレイレポートを参考にしようと思っていたのに……。憶えていたのは「敵が強い」という報告のみ。推理シーンをどう処理したかすら、知りません。
幸いルールに詳しい人がプレイヤーにいたので、その人に説明は任せ、横で読み掛けだったシナリオに取り組みました。
そんな状態ですから、例の推理の場面(第三アクト)の解決策はまともに考えられません。
三人用のシナリオなのに、プレイヤー四人だったので、四人目にはキャラクターを創ってもらいました。
「秋月ゆう子の双子の妹でフリーター、メイド喫茶*1でウェイトレスをしている。前世は歌姫に飼われていた犬」とかいう挑戦的な設定を告げられましたが、セッションをする上では事件に関わる動機さえあればいいので許可。


事前に留意できたのはもう一つだけ。
「戦闘では、敵が強い」ということを聞いていたので、データを改変……はせず、「貴方方は只の人間です。例えば犬を相手にするにも怖いしまともにできるとは思いませんよね?」と強調し、それから戦闘中に取れる行動の一覧を渡しました。
シナリオ中のデータはルールブックからそのまま取ってきているので、そういう世界観なんでしょう*2

第一アクト(序)/「秋葉原

さて、第一アクト。
さっそく、キャラクターが合流しなくて困りました(笑)。
キャラクターが合流、後、力を合わせて現れた狂犬と戦う、という幕なのですが、PC2(高校教師)が、アパートから出て来ようとしません。
PC1(探偵)も最初は周辺聞き込みをしようとしたみたいでちょっと焦りました。まあでもこちらは、プレイヤーの協力の下、「被害者秋月ゆう子の部屋の傍でも聞き込みをする」ということで手を打ちます。
PC2は、シナリオを思い出して実はアクト2で合流してもいいことに気付き、放置。
秋月ゆう子の部屋で、どのタイミングでPCが合流するか書かれているのは便利でした。
因みに、PC1はマネージャー尾崎の銃は、盗みませんでした。


その部屋での狂犬の戦闘は、早速PCに「戦闘はヤバイ」という心理を植え付けられたようで何より。
空手を習っている探偵が傷を負いつつ勝てたのだから、まあそんなもんでしょう。
力が無いながらも、行動遅延→(犬が行動した後で)防御を捨てて素手で全力攻撃、というPC4の卑怯な戦術が地味に効いていました(笑)。
一対複数はやっぱり辛いルールだなあ。


何とか犬を撃退し、PC1のメトロポリタンで全員、唯一部屋の描写が出ているPC2のアパートへ。
情報の掏り合わせをして、PC2は犬神の話を思い出します。

第二アクト(破)/「上野」

秋葉原と次アクトの浅草はそれなりにやった積もりですが、ここ上野の情景描写をするのは忘れていました。
あと、上野って僕にもあんまりイメージ無いんで……。秋葉原にも行ったし、浅草は浅草寺も雷門も見て来たんですけどね。


閑話休題
このアクトは秋月ゆう子殺しの犯人を調査する幕、しかしコンピューター検索を期待されるPC2はまたも引き篭もって何もしません(笑)。
あ、プレイヤーの名誉の為に言っておきますけど、「PCを取りまとめたり、状況整理を促す」といった、地味な、でも大切な役割を果たしてはいました。


さて、PCが調査対象に選んだのはPC1が「秋葉原で目撃証言を聞き込み」、PC3と4は「秋月ゆう子の事務所で聞き込み」です。
シナリオを知っている人は気付いたと思いますが、秋葉原での聞き込みは、チンピラを四人も相手にしなければならない……。
一抹の不安を覚えつつ、時間稼ぎに先に事務所のシーンに移ります。


シナリオに無いシーンなのでどういう情報を出そうか悩みましたが、「マネージャーの尾崎は浅草の病院で今入院中、助かっても植物状態みたいね」と、応対した人は教えてくれたことに。
でも、今から思うと、既にマネージャーは解雇されているので、この発言はおかしい……。後から突っ込まれなかったので胸を撫で下ろしています(笑)。
ほら、


(前略)ミステリーやホラー小説の書評を半端なライターが偉そうにこのプロットは破綻している、と書いているのを読む度にやれやれと思います。(中略)破綻していても無理やり読ませてしまう、というのがプロの書き手であって(後略)
大塚英志も言っています*3し、『WoD』はホラーなので、「マネージャーが解雇されている」と情報を出した時に突っ込まれなかったならストーリーテラーの勝ちです、きっと。多分。


さて問題のPC1の秋葉原聞き込み。
前の二人も来ないのでどうしようかなあと思いつつも、アドリブ能力の低い僕はシナリオ通りやるのでした。
必要な成功数が溜まってチンピラに囲まれる探偵。今から思うと、別の人に聞き込みして情報得た後でチンピラに囲まれてもよかったんですね。ああ、ほんと、アドリブできるようにしないとなぁ……。
さて、初めての『WoD』にも関わらずしっかり行動オプション一覧を見て、戦術を組み立てつつちまちまとリーダーにダメージを与えていきますが、惜しくも勝てずに昏倒してしまいます。
シナリオによるとチンピラは、「二度と調査が続けられないほど痛めつければ、呪いから解放されると信じている」らしいので、倒れた後もぼこりまくりです。
情報は困ったので、後から、「殴り掛かりながら言っていたチンピラの言葉を総合したら、これこれが分かった」ということにしました。そんなわけで流石に住所は分からずじまい。


チンピラが去った後でPC3と4が発見して、PC2のアパートに。
少し休んで打撃ダメージだけでも回復し、その間PC2が偽犯人の鈴木重光の住所を探します。
そこで受けるクラッキングに辛うじて(一度引き分けた後に)買ったPC2は「裏で何かが動いている」と。只の高校教師がナチュラルに「裏」という言葉を使っていて、ちょっと笑いました。
しかし痛めつけられてまで得た情報だからか、クラッキング元の浅草寺裏病院より先に、鈴木重光のアパートに向かいます。
まあ、病院に行っても、「(職員専用だから)コンピューターには触らせられません」と退けるつもりでしたけど。つもりと言うか、シナリオの記述はそういうメッセージにしか読めない。


今度は四人全員で連れ立っていきます。
狂犬、そしてチンピラとの戦闘が余程効いたのでしょう(笑)。
しかも、アパートの部屋には入らず、ドアの外から鈴木重光と会話するという場面は滑稽というより、プレイヤーのリアルな恐怖が伝わってくるよう。そうそう、やっぱり、キャラクターに死んでほしくはありませんよね。大事にしてください。
特に問題は無いんでPC3は歌を歌って鈴木を落ち着かせ、情報を聞き出し、そして、犬神が現れます。
この時、PC1以外の全員が、PC1と鈴木を放って逃げ出したのが、酷いですよねえ。これも笑いながら見ていました。まあ、犬神の〈恐怖〉という【真力】のせいなんで仕方無いんですけど。ダイス・プール10ですから。
PC1は残ってどうしたかというと、何とか犬神を止めて、鈴木を守ろうとするんです。しかし、強いとは言えただの人間、【真力】に対抗できる筈も無く、目の前でむざむざと鈴木は変死します。
アパートを出た後で犬神の電話を受け、切れた後むかついて電話を壊したのが格好かったし、憤怒の【悪徳】もよく表れていました。経験点もののプレイです。

第三アクト(急)/「浅草」

さて、いよいよ、推理シーンのある第三アクトです。セッションしながら、そのシーンの処理法を考えるだなんて器用なことはできず、冷や冷やもの。


PCは「古文書で犬神使い退治の方法を探す」と「誰が犬神使いか調査する」という二手に分かれました。
ここで、あっ、と思いました。
シナリオを読んだ時には「推理してください」と言って、できるものかなあ、と悩んでいたんですが、確かに実際その場にいれば、「調査する」のが普通ですよね。いやはや僕は頭が固過ぎです。


都合よくPC2(高校教師)とPC3(歌姫)で古文書調査をするとのことで継続行動です。
時間が無いこともありましたし、ちょっと多いなと思ったので、本来の必要成功数を減らしました。最初は10(挑みがいのある)又は20(圧倒的)必要だったのですけど、これを7又は14に。
ホワイトウルフの人、この数値設定は酷いと思います(笑)。確かに「挑みがいがあ」ったり「圧倒的」な情報と言われるとそうだろうと思うので、これはシステムのバランスの問題なんだろうなあ。この点、ルールブックを確認していないのか、シナリオが責められることが多いようなので、ちょっと擁護。
さて、出てきた情報、「犬神の呪法返し」と「憑き物払いの呪歌」、後者は歌詞を予め紙に書いてプレイヤーに渡したら読めず「古文書だ!」と喜ばれたのが釈然としません……*4
それはともかく、「これを淀み無く読み上げることで憑き物に影響を与えられる」という記述と併せて、プレイヤーが実際に読むことを期待していた様子。でも判定によると書かれているのですね。今流行のオンラインとの差を付ける意味でも、プレイヤーの期待に沿った方がよかったかも(笑)。


推理の方は、「鈴木重光に(犬の首の入っていた)鉢植えを送った者を特定すればいいのでは」とか、色々具体的な方法が話し合われて感嘆するストーリーテラーでしたが、時間が無かったので泣く泣く判定することに。
そして「マネージャーの尾崎貴史が犬神使いである」と、予想。
シナリオに書いてある情報を出していく時に、一々「そうだったのか!」とか「そんな気は薄々していた……」と反応するプレイヤーを見て、安心。最初この場面を読んだ時には、プレイヤーが納得しないかなあ、なんて心配しましたが、セッションしていれば、意外と予想付く物なのかも知れませんね*5
その後でちゃんとその予想の裏を取ろうとしていたプレイヤーは流石です。ほんと、時間が無かったのが惜しい。


いよいよ犬神使いの待つ浅草寺裏病院へ。
このシナリオの山場*6である雷門の描写がお座なりになったのは残念ですが、仕方ありません。
「壁から入るか」と言うプレイヤーに、普段なら困る所ですが、ちゃんとその時の判定を書いてあるシナリオが笑えます。
尾崎の部屋行って空であることを確認し、足音を追って慌てて屋上へ。何と、判定の成功数故に、PC1が一対一で尾崎と対面するようになっているのは盲点でした。かっこいい!
そして、今度は、描写を読み上げている途中「(尾崎の)右手に拳銃」と書かれていたのを見て大喜び。
そうか! 最初のシーンで銃を持っていたのは、この為の伏線だったのか!
まあ入院していて持っているのは微妙かもしれませんが、コンピューターを使って、それもクラッキングをできるほどの男、銃を隠すくらいは多分できるでしょう。〈道徳〉1だから手段は選ばないでしょうしね。それに、死んでいるのに動いているくらいですし*7


戦闘はイニシアティブの都合で中々歌姫の歌が効かず苦戦しましたが、尾崎の銃を落としたのと、攻撃を集中して昏倒させられたのが功を奏して、何とか、辛うじて勝つことができました。


そんな年末最後のセッションでした。
エンディング? 本当に時間が無くなってしまったので、できませんでした……。
「死んだ秋月ゆう子の後釜を狙って、知略を働かせる双子の妹(【悪徳】が嫉妬)と、それに嫌悪を示すゆう子の親友(【美徳】が希望)」「ゆう子と歌姫がオーディションで奪い合った曲は『オトメロディ*8』」「女王の教室ネタがそこかしこに……」「本格派志向のメイド喫茶*9」など内輪ネタはかなり盛り上がりましたが、割愛。


雑感。
僕は『WoD』は二回目で不慣れ、ホラーRPGのGMなんてやったことが無い、という状況でも楽しくプレイできたので、ほっとしています。
そもそもシナリオをどう作っているか困っている時点で、公式シナリオの存在はありがたい……。
ゲストとも言うべき、遊びに来てくれたプレイヤーも楽しかったと言ってくれましたし*10、他の人も同様ですし。
これは、新WoD の日本語版から WoD に触れた人もプレイレポートで言っていることなので、いいシナリオなんでしょうねえ。
ベテランの人は
http://unpluggedgm.blogtribe.org/entry-fcd85c88bfc6b90742ab6a90d0e7ed4b.html
にあるみたく「物足りない」と感じるのかも知れません。


これは擁護の為に書いているんじゃなくて、普通にセッションが楽しくて書いたレポートです。
勿論「楽しかった」と言う視点で眺めるバイヤスはあるかもしれませんが。
あと、機会を捕まえて擁護した点もありましたね。
最近僕に「小林正親擁護発言」が目立つなあと思った後に書くもんだから、一応断っておきます。

*1:某RPGショップの上にあるらしい。

*2:余談ですが、翻訳物でしかもライセンスと繋がりの無い人がシナリオを書くというのは、気を遣うものなんでしょうね。

*3:大塚英志『キャラクター小説の作り方』。講談社現代新書

*4:まあ確かに字が汚かったのかもしれないけどさあ(笑)。

*5:「セッションに出てこないやつが犯人、という方が説得力がある」なんて言う人は多分、『クトゥルフ神話TRPG』なんかをやっても、すぐに「じゃあ警察に電話します。」と言う人なんでしょうね。或いは『熱血専用』で倒した敵の持ち金を漁ったり。

*6:記述の熱の入り方からの判断。

*7:「瞳孔が開き、白目が減った」と書いてありました。書かれている描写を読み上げるだけで伏線が撒かれて回収できるというのは楽だなあ。

*8:おねがいマイメロディ』の主題歌

*9:主任が「メイド長」と呼ばれていたり……。

*10:この人はホラーRPGのGMをよくやった人なので、正直セッションは怖かった。