HERO

居間で買ってきたばかりの『蟲師 Official Book』をちょっとだけ読んだところ、弟がごそごそと借りて来たテレビドラマのビデオを流しました。


気にせず本を読んでいたのですが、段々と、テレビの音が耳に入り出します。雑音として処理できなくなります。
話の内容はさっぱり分からないのですが、会話のテンポが、軽快で楽しい。
気になる。いよいよ諦めて、そのドラマ『HERO』を観始めてしまいました。
そんなわけで『蟲師 Official Book』の話はまた明日にでも。


型破りの検事九利生公平が、青森から東京の地方検察庁へやって来て、常識外れの態度と捜査で最初色々引っ掻き回すけど、それが周囲に影響を与えていく、というドラマです。
一話完結型。


さっきも言いましたが、会話のテンポがいい。やり取りが楽しい。これが第一。
次に内容。特に最初は「検事が捜査によって最初分からなかった謎を明らかにしていく」というスタイルでは全然ないので中々新鮮です。表向きそういう展開を辿っているのですが、見れば焦点がそこではないのは明白。殆ど偶然とかで片付いちゃいますし。
しかしその偶然がまた、前半で提示された三つくらいのテーマ(アンチテーゼ)を同時に解消しちゃっていて、うまいなあと関心しきり。単に刑事ドラマの目先を変える為だけに女弁護士を主人公にして、毎週々々殺人事件を扱うドラマとは大違いです。
それだけに、第七話くらいから、(出来はいいんですが)普通の刑事ドラマみたいな、捜査中心の話になってしまったのは、ちょっと残念。あと、笑いの要素も段々少なくなっていっていました。大人の事情でもあったのかなあ?


それから、普段ではあまり気にしない、俳優のじょうずさも目立ちました。
表情、目の動きで演技する箇所が多くて、画面もアップが多くて、それでも見て拙さなんか感じさせません。アップが多いのはちょっと押し付けがましいかなとは思いましたが。


さらに。主人公九利生公平の俳優がとても上手で。
例えばソファで、眠ってしまった女の人に寄り掛かられたシーンがあります。腕を妙な角度に動かして自分のマグカップを後ろの窓の桟に置き、寝てしまった女のマグカップもこぼすといけないので、起こさないようにそっと、右手で取ろうとして取れず、左手で取ろうとして取れず、右手でようやく取る。ついでに眼鏡も外してみる(笑)。
これが、ドラマを観ている体感時間なので信憑性ありませんが、一分くらい、あったんじゃないでしょうか。その時間飽きずに観られました。


あと他に、恋愛の複雑さを語るシーン。ネタバレになってしまいますが。
「好きだからこそ、相手を陥れてしまう」というのは、現実でまあそれなりにあることでしょう。でもドラマは現実でなく、視聴者への説得力をちゃんと提示しないといけないので、ぽんとその事実だけを見せるわけにはいきません。
「そういうことってあるんじゃないのかなあ、何となく」ということを九利生が話すシーン、セリフは普通なんですが観ていて「ああ、あるよね」と思います。
でも、最後、好きな男を陥れた女の人が、今度は理屈でちゃんとそのことを語るシーン、言っていることは分かるんですが、今一説得力が……。この違いは多分、演技の巧さからくるんではないでしょうか。


とても面白くて、最終話、朝までずっと、眺めてしまいました。
弟は途中で寝てしまいましたが(笑)。
最初の方の話も観ようっと。