買わないと誓った筈なのに……

発売当初は、どうせいつものアレだと思って買わない決心をしたんですが、昨日、つい気が緩んで買ってしまいました。
蟲師 Official Book』です。

蟲師 Official Book (KCデラックス アフタヌーン)

蟲師 Official Book (KCデラックス アフタヌーン)

もうアニメも終わっちゃっているのに……。
(追記:追加放映があるそうです。コメント欄参照)
最初の増刷掛かるまでにひと月経っていないというのは凄いなあ。
あと、「公式本」てどういう意味なんだろう……。公式解説本、ファンブック、とかなら分かるんですが。


ピンナップ、アニメのダイジェストに続いて始まる本編は、第一章「アニメ関係者へのインタビュー」、第二章「いつものアレ、つまり蟲の性質、登場人物、ストーリーダイジェスト」、第三章アニメの脚本家による外伝小説」に分かれています。そのあとに原作者インタビューも載っています。


当たりパートと外れパートの差が激しい本でした。

  • インタビュー

アニメの監督、キャラクターデザイン・総作画監督、音楽家、音響監督、主人公の俳優、シナリオライターの一人、へのインタビュー記事です。
自分が読んだ漫画に関して、他の人はどんな風に読んだんだろうというのはいつも気になるところ。アニメ作成スタッフということで、普通以上に読み込んでいる人の話が聞けるのは楽しい物です。
驚くほどみんな、原作とアニメ製作に関して同じ意見を持っている。


特に、監督が企画提出も兼ねたそうなんですが、その時の想いを語っているところは、「製作側は損得勘定で動いているのかなあ」と普段考えがちな分、衝撃で、かつ嬉しい。あと、スタッフがみんな、「原作再現」という方向性に最初から纏まっていたというのも、印象深いですね。実際他の人のインタビューを読んでも、驚くほど、原作とアニメ製作に関して統一された意見を持っている。それが羨ましいか否かは、ちょっと考え込んでしまいますけども。


それから音楽家増田俊郎の話が面白かった。
音楽は、目に見えないけれど、作り手の中にある“何か”が色んな表情を見せている。
これが、蟲みたいだと。
こういう視点で蟲を語るのは、面白い。
「ちなみに増田さんは、蟲みたいな不思議な存在を信じていますか?」と言ったインタビュアーの勝利ですね。


このパートは当たり。

  • 原作おさらい

いつも思うんですが、こういうパートって、誰が喜ぶんだろう……。
二次創作のアンチョコにしたりするんでしょうか。
おまけじゃなくてメインだからなぁ……。

    • 蟲の理

蟲の一般的な性質を解説する十六節。
各々、原作の抜粋がページの半分以上を占めています。
解説も、原作の外には出ていません。つまりアンチョコ。

蟲に関連した人物の紹介。
手抜きはそれほど無さそうですが、日本語が微妙に不自由(笑)。
いや、間違っちゃいないんですが、ちょっと読み難い。

蟲の個々の種の解説。
形態、性質、症状、弱点、治療あたりの項目に分けています。
「編著:アフタヌーン編集部」の本なんで分かり難いんですが、この節を書いている中に一人だけ日本語上手な人がいました。

漫画の何本かの話を、ギンコの手記風に描いたストーリーダイジェストです。

  • 外伝小説

アニメの脚本家のうち、桑畑絹子と豊田美加による、それぞれ10ページ足らずの蟲師小説7本。

    • 藁の手(桑畑)

蟲師が事件を解決するのではない、蟲師小説。
ソツなくまとまっています。

    • 笑む魚(桑畑)

緑色の爪をした、ある程度歳をとると突然若返ってしまう女の話。
オチがツボでした。やばい。

    • 千の舌(桑畑)

心に思ったことを、包み隠さず喋ってしまう男の話。
ちょっと微妙。

    • 濃い闇(豊田)

若いうちから、みなボケてしまって危機に瀕している村のお話。
今一アンハッピーエンドにする意味が分かりませんでした。

    • 白群れの木(豊田)

ある雪の積もった村の、神隠しの話。
子供という存在の特徴を活かしたオチでした。

    • 現し髪(豊田)

原作とは趣の異なった蟲師ストーリー。
人形が動くという噂を聞いて、蟲師が村にやって来る話。

    • 漆黒に惑う(豊田)

漆とそれに似た蟲の話。
豊田美加の中では一番原作に誓い雰囲気だし、展開もまとまっています。


桑畑絹子は上手に書きますね。蟲のアイディア、蟲の生態の分かり方、対処、蟲に関わった人間達、何より小説としてのプロットが上手。
他方豊田はどことなくぎこちない気がします。展開がどれも似たような感じですし。
この本で一番面白いのは桑畑小説かなあ。


このパートは当たりです。


買っておいてなんですが、この手の解説本は買うべきじゃないよなあ。
今度こそ自重しよう。
『エマ ヴィクトリアン・ガイド』がよかったからつい……。