幻滅
筒井康隆の紹介で面白そうに思ったのでトーマス・マンの「幻滅」を読んでみました。
- 作者: トーマス・マン,実吉捷郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1979/03/16
- メディア: 文庫
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これは読書体験によって生まれた期待の、萎んでいくことに関する小説です。
例えば恋愛。
僕は子供の頃よく「りぼん」を読んでいたんですが、それで「恋しているときの気持ってよく分からないけどすごい素敵そうだなあ」と思いました。
これは、「こんな感じなのかな」と予想するわけじゃなくて、「とにかくよさそうだ」と思うんです。
そして実際恋をしてみると、その漠然とした「期待」と実際とのギャップに戸惑う(予想したのと違う、というわけではありません)。それがこの話での幻滅です。
成人するまで、ほとんど読書で世界観を作ってきた主人公が、人生を始めて、いかにして幻滅を繰り返してきたかを語るのです。
この幻滅がよく分かるのでいてうんうん頷いてしまいました。
今でも新作RPGが出ると言っては期待を膨らませるわけですから。
あとはテクニカルな話――。
物語は主人公の話を聞く聞き手の視点で描かれています。
最初、聞き手が主人公のことと、その話を思い出す、という書き出しです。
というように。
僕は白状する。あの妙な男の話したことは、僕をまるっきり混乱させてしまったのである。
これを最初に配置したのが巧いなあと思いました。
と言うのも、物語の終わり方に余韻を持たせているからです。
余韻を持たせようと思っても、普通に考えたら聞き手の戸惑いもある。それを描かなくては不自然だ。
そうしたら余韻が薄れてしまう。
それを回避する為に多分、最初にこうして戸惑いを吐露していたんでしょうなあ。
この本の続く短編「墓地へゆく道」は意味がさっぱり分かりませんでした(笑)。
誰か読み方を教えてください……。