四季 - 春夏秋冬

すべてがFになる』を漫画で読んだのが大分前のこと。
冷たい密室と博士たち』の小説は普通のミステリーだなと思いました。
φは壊れたね』で、引っ掛かりました。探偵役の海月及介や、登場人物達が、彼等の視線が面白くて。でも、ミステリーだったので、詰まり不可能犯罪が起こって、探偵役がそれを解くという構成だったので、面倒で。
普段ならこんだけ読んで面白いわけじゃなかったら、もう、森博嗣なんて読まなくなるんですけど、海月達の描き方はやっぱり、読んでいる間に気持ちいいのが、多分、原因で、『四季』に、手を伸ばしたのだと思います。
読んでみて、今までの作品で引っ掛かっていたことが分かりました。
そうだ、ミステリーなんかじゃなくて、こういう小説を、書いてほしかったのだ、と。


『四季』は『四季 春』『四季 夏』『四季 秋』『四季 冬』の四冊からなっていて、真賀田四季の一生を綴っています。『すべてがFになる』に出ていた(?)あの四季博士です。あの本で明かされなかったことが『秋』で明かされていたりも、します。


真賀田四季は人とは頭の作りが違う人間でした。
一度接した物は、絶対に忘れない。例えば視覚情報も、そっくりそのままいつでも思い出せる。
計算能力がとても高く、誰よりも先まで、論理的思考を展開できる。
物事の処理能力も無限かと思えるほどで、人と話しながら全く別の計算を展開していたり、複数の人間の思考を同時にトレースしたりも、できる。


そういったタイプの、天才。
幼少の頃は伸び伸びそういった思考を展開して、周囲の人達には奇異に見られつつも、同時に価値ある人材として扱われていました。
しかし、年を取ってからの彼女の思考は、そういったすっきりした見通しを持ちません。それは多分、興味の主要な所に、生命が入ったから。矛盾だらけのこの概念について考えて考えて色々考えているうちに、その考え方はかなり複雑になります。まあつまり、読んでいて全然、理解できませんでした。
でも、それでも彼女の見た景色の片鱗くらいは、思考じゃなくて知覚情報や行動なんかは分かるわけで、それから窺えるだけでも刺激的な体験で、あっという間に、四冊、読んでしまったのでした。



この本を巧く消化できていないことが、出てしまっていますね。
何年かしたら、僕は、またこの本を読むでしょう。