空色勾玉

荻原規子の『空色勾玉』読み終え。

空色勾玉 (トクマ・ノベルズ EDGE)

空色勾玉 (トクマ・ノベルズ EDGE)

面白すぎて読み進められなかった本。6、7週間かなあ。幸せな時間でした。


古代日本風の世界を舞台にした、冒険譚。
高天原では、長く続く輝(かぐ)と闇(くら)、二氏族の戦いが続いていました。
村娘に過ぎなかった狭也(さや)が、闇側のキーパーソンである〈水の乙女〉であると言われ、最初反発しつつも、やがて闇の軍勢を率いるまでに。最後には、そうした〈水の乙女〉としての運命すら、抜け出すように、自分の強い意志を持つようになります。


また同時に、〈水の乙女〉と〈風の若子〉の運命の恋の話(と、帯に書いていました)。
狭也同様、輝側のキーパーソンである、〈風の若子〉の稚羽矢(ちはや)はしかし、輝の宮で軟禁状態を強いられていました。
狭也に無理やり連れ出された稚羽矢は、彼女に誘われるまま闇の軍勢として戦ううち、輝の氏族、それも輝の御子としては許されないような考えすら、持つようになっていきます。
そしてそれが戦の終結、ひいては戦の根本原因の消化にまで、結び付くのです。


ストーリーはオーソドックスです。きちんと、必要なエピソードは全部入っていますが*1
それよりも、『ウルフ・サーガ』の時も思ったのですが、ファンタジーを描く人は本当に丁寧に言葉を選びます。言い回しを選びます。
そこに描かれる空気や情景は美しい、と言うか、いつまでも見ていたい物で。それで、ずっと、読み進められなくなってしまいます。


「古代日本を舞台にしたファンタジーって、どんなかな」と、半ば勉強のようなつもりで読み始めたのに、最初のエピソードからもう、罠に掛かってしまったかのようでした。

*1:キャラクター主体に引きずられると、抜けたりしますからね。