まだ、雪

 今年も相変わらず、五月を過ぎてから北海道では桜が咲くみたいですね。
 桜前線が徐々に北上している昨今、でもこの時期はまだ、こちらでは雪が降りますよ。
 ちらちら、ちらちら。


 これは遠い昔、まだ北海道と本州が陸続きだった頃に端を発しています。
 その時代、北海道にも雪が降ることは無く、代わりに春には、桜が舞っていました。
 ところが北海道のある男が思ったのです。
 確かに桜は綺麗だ。ちらちら落ちてきて、空恐ろしく美しい。だがどうだ、これが白くては益々もって綺麗だろう。その舞い落ちる様を見て感激に身を震わさない者はいないに違い無い。
 こう考えて彼は神の国へ出掛けて行って神に掛け合い、白い桜を貰って北海道に植えました。人々は春に白い雪に感動して体を震わせるようになりました。