星のシャボン

その小林小説、題名は「星のシャボン」です。
本書冒頭の目次では著者が「行間の魔法使い」と紹介されていて、ちょっと笑いました。


さて、内容ですが、これは面白い。
リプレイ「違う歌 或る秋の物語」や「ロール&ロール」誌での『ローズ トゥ ロード』小説以来の、面白い小説です。
こういうのを待っていました。


ゲストキャラクターであるナミ*1という女の子と、“百害あって一利なし”のテオドラとの交流のお話です。
このナミという女の子は、いつも独りぼっちで、誰からも好かれることがありません。
まずその様子が、じっくりと、上手に描かれて、感情移入してしまう。
やっと、誰もいない、広い部屋に辿り着いて、ここを“居場所”と思っていたところへ、速水螺旋人の萌えキャラ(らしい)テオドラがやって来るわけです。
気の強い、喧嘩っ早い、ナミとまるで反対の女性が。
互いに反目しあいつつも、最後には友情が育まれる、だなんて、そんなよくある終わり方ではありませんよ?
あとは読んでのお楽しみ。


小林正親は、やっぱり、心も立場も弱い人を書かせると天下一品です。


迷宮クロニクル』付属小説の中でも、一番に面白い。
これまでは Vol.2 の星宮すみれ小説が一番でした。着眼点や描写がよくて、“惜しい”小説で。オチさえ何とかなれば……。
……これに関しては好みかもしれませんね。世界設定担当の魚蹴が書いた小説が、面白いと思えませんでしたから。僕の感覚がシニカルポップじゃないのかも。
(「星のシャボン」はシニカルという点では、かなり上位だと思いますけれども)


こういう『まよキン』をプレイしてみたいなあ。是非誰かプレイヤーをやらせてください。
でも、テオドラが本当に速水螺旋人の萌えキャラだと言うなら、これは、怒られなかったんでしょうか(笑)。
それくらい今でと違うので驚いてしまいました。
速水螺旋人は、小説であったことを次の『迷宮クロニクル』冒頭漫画で使ってくれる、という素晴らしい人なので、こんな面ができてしまったテオドラを、どうするのか、次号にもちょっと期待してしまいます。

*1:“並み”の意。