まだまだあぶない刑事

まだまだあぶない刑事』を観ました。
悲しい物語でした。
結局のところ、今まで、最初のシリーズの最初の五話しか観たことが無いのですが、それが無かったら映画を観には来なかったろうという五話でしたので、数奇な運命です。


(ネタバレします)


『あぶない刑事』はタカとユージの二人組の刑事が、コミカルな演出を交えつつ刑事として犯人を追い詰め、逮捕していく刑事ドラマです。
その過程で、自分の正義の為なら平気で上司の命令は無視するし、職務規定には違反するし、と、いつも始末書まみれになっています。
そこが「あぶない」の所以です。
繰り返します。
自分の信じる正義の為なら、後先考えず、突っ走ってしまう、そんな「あぶなさ」を持った刑事達の物語なんです。
周囲の上司達も、迷惑顔をしつつも、結局彼等の働きが無いと犯人逮捕に至らないわけだから、心中複雑。


お浚いが終わったところで今回の映画です。
まずぐさりと刺さったのが「俺達のやり方を教えてやらないとな」という二人のセリフ。
今回は前作から開いた七年という歳月を感じさせる為か、若手の二人組の刑事と組んで、タカとユージは活動します。
タカとユージ二人きりの場面でのセリフ。「(二人の若者に)俺達のやり方を教えてやらないとな」
でも、この時はそれが何故引っ掛かるのか、まだ分かりませんでした。


次はクライマックス。
実は裏で悪事を働いていた若手刑事二人との、対決場面です。
ユージが、水嶋に向かって「お前を後継者にしようと思っていたんだよ」と。


以前は、タカとユージが行動するとそれがあぶなくなってしまう、という番組でしたが、この映画では「あぶない」というスタイルが出来上がっていました。
そして、二人は、それを自覚していたのです。「俺達のスタイル(様式、型)は<あぶない>だ」と。
以前は、周囲のことは一切気にせずに自分の正しいと思うところを為していた二人ですが、今回は、(上はともかく)下のこの二人のことを、この二人と自分達の関わり方を、意識してしまっている。


ああ、もう、彼等は、あぶない刑事ではないのだな。
七年という歳月は、そういう意味を持っていたのだな。
多くの場面で描かれる「七年」はわざとらしさがありましたが*1、この「あぶなさが一つの(客観的に見た)スタイルになってしまった」ということが感じられる場面は「本物」に見えました。
(ひょっとしたら作る側がそのことに気付いていないからじゃないか、とも思いますがこれは邪推ですね)


と、そういう物悲しさを感じさせる映画でした。
パンクがただの「一つの様式」として相対化される現場を見た気がします。

*1:それがこのシリーズの売りですし、それを楽しみに行きました。