12人の怒れる男

以前三谷幸喜の舞台『12人の優しい日本人』を観て、これは是非とも元ネタを観ねばなるまい、と、『C:TD』後に『12人の怒れる男』を観ました。
お陰で何だか二重に驚かされてしまいました。


これはアメリカ合衆国を舞台に、少年が父親を刺し殺したという事件を巡る陪審員の話し合いを映画にした物です。
最初は11:1で「有罪」が圧倒的優位、「無罪」に投票した一人も「有罪だとは思うけど人一人の命が関わっている(有罪になったら死刑がほぼ確実)。ちょっとでも疑問があれば話し合うべきだ」という消極的な理由によってでした。
始め、有罪と思う11人が無罪の1人を説得しようとし、無罪側はそれへの反論として無罪側を説得するという形を取るんですが、その反論を聞くうちに一人また一人と無罪が増えていく。
というドラマです。


が、いかにして無罪が増えていくかは勿論機知に富んで面白いんですが、それよりも、議論の中で12人の様々な性格を描いているところが面白い。
舞台がアメリカだもんで、人種や貧富の差で色々の人間がいるんです。
論理的な人、端からスラムの人間など有罪と決め付ける人、年よりは大切にしろと憤る人、などなど、誰も身近にいて不思議無い人ばかりです。アメリカなんで多少、遠い人もいますけど。
明確に「シーンが切れる」というところが無いままずっと描くのも驚きます。


そして、これのパロディである『12人の優しい日本人』では、人種の差別や(昔の舞台だから)貧富の差すら描かないで、それでも12人の日本人をキャラクター立てて描いており、ますます凄い、と思います。


更に。
『12人の怒れる男』からは「陪審員の話し合いを通して人間の性格を描く」という基本的なアイディアだけ借りてきたのかと思ったら。
反論の仕方、ある人がある人の人格を攻撃する時の口実など、細かなギミック、事件までもが多く元ネタによっていたのでした。
それでシリアスなドラマから大きな笑いを作っているんだから凄いよなあ。
お陰で『12人の怒れる男』を観ながらも笑いが止まりませんでした。


是非、両方見比べてみてください。