もっと早くに読んでおけばよかった

漫画『デスノート』の小説版を西尾維新が書くということから派生して*1、少しミステリーの話をしていたところ、一人が米澤穂信の『氷菓』を貸してくれました。
面白かった。

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)


何事にも省エネをモットーとする奉太郎が、高校に入って驚くことに部活(古典部)に入部。恐ろしい姉の命令でです。
彼が密室状況となった高校で立て続けに起こる殺人事件、それも、犠牲者が凍らされてシャーベットのように(巨大な)スプーンですくった後があるという謎を、次々解いていく。
……という本では全然なくて、例えば図書室から毎週決まった曜日に借り出されて、その日のうちに返される本がある。しかも借主は毎回違う人。
という変わったことに、勉強ができる、というのとはちょっと違った頭のよさを持つ*2奉太郎がどういうことなのか説明を与える、というのがメインです。この点を指してミステリー。
何度かそういう「事件」を解決して見せた奉太郎を見込んで、同じ古典部の千反田(ちたんだ)えるに頼みごとをされるところから本編開始。
彼女が小さい頃伯父と話していて、泣いてしまったことがある。でも何故かは全然覚えていない。その秘密を、奉太郎なら解いてくれるのではないか、ということです。彼女が古典部に入ったのも、伯父が入っていたと知って、手掛かりを求めて来たのでした。


こういう、「(近くない)過去のことを推理してみる」というミステリーを、一年くらい前からずっと読んでみたかったので、ほんと読めてよかった。
実はこれを期待して『ダ・ヴィンチ・コード』を読んだりもしたのですが、流石にそっちは当てが外れました(笑)。ミステリーの手法じゃありませんでしたからね。


主要登場人物が四人しかいないなんていう、(いい意味で)狭い世界の本も久しぶりだしなぁ。
よく小説(など)を批判する時に「人間が描けていない」というのがありますが(今ではあまり言う人もいないかもしれませんが……)、人間が描けていないからこそ、面白い物もあるんだよなあ、と実感。
デフォルメした性格と、それを利用した小気味いい会話・関係が楽しくてすいすい読めてしまう。かと言って別に底が浅い人物造形ではない。


主人公は性格が「灰色」で回りに流れやすくて、しかも自分を「灰色だから」と決め付けてその通りに振る舞おうとしている辺り、西尾維新戯言遣いシリーズのいーちゃんと似ていると思ったのは僕だけでしょうか(笑)。

*1:「最後に戦闘シーンを入れてくれればミステリーもRPGにできそうだね。西尾維新ならあり得る」とか。

*2:実際彼の成績は、学年でちょうど真ん中。